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仙台高等裁判所 昭和25年(う)251号 判決 1950年12月18日

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

判決要旨

被害者に精神障害があり屡々兇暴性を発揮していた場合、これに対し適法な手続により監置する等不祥事故の発生を防止すべき義務ある者がこれを放置し偶々被害者が常規を逸した行動を見るや之を緊縛して自由を拘束し全裸のまま物置内に長時間監禁し死亡するに至らしめた場合正当防衛又は自救行為若しくは過剰防衛或は期待不可能性の問題等を容認する余地はない。

理由

控訴趣意第一点は被告人の本件行為は正当防衛又は自救行為であるから違法性を阻却する。仮りに正当防衛でなく過剰防衛であるとするも其の刑は免除されるべきである。なお被告人の行動はいわゆる期待不可能性のものであるから責任を阻却するというのであるが記録を精査検討するに被害者鏡德治は精神障害があり従来屡々兇暴性を発揮していたのであるから予めこれに対しては適法な手続によつて監置する等不祥事故の発生を防止する義務さえある被告人が漫然これを放置して本件のような被害者が常規を逸した行動を見るや奮然として齢七十一年に達する老父を緊縛して自由を拘束し然も全裸のまま物置内に約二十八時間の長きに亘つて監禁し、この緊縛と其の間に生じた右胸腔内出血に基く呼吸困難のため死亡するに至らしめた事実については所論のような主張を容れる余地はないと断ぜざるを得ない。論旨は理由がない。

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